作業ヘルメッターのおんな道

肉体労働系レディ(淑女)の徒然です。フリーランスで造園土木の作業員をしています。お仕事と酒があればどこでも飛んでいきます。酒飲み。日焼け上等!

読書レビュー「赤い人」

実は最近読んだものではなく2年ほど前に読破した小説なので、読後のような興奮は今はない状態であるが、とても充足した読後感。

史実小説として素晴らしすぎて読むのが大変ではあるが、当時の人達の語られざる思いが小説の中にギッシリ詰まっている。史実小説は淡々としていていい。作者の感情は読者のそれぞれの感情に任せます、みたいな雰囲気とても好き。

 

 

明治時代、北海道開拓のために集められた全国の囚人たちの過酷な開拓使。大変だったのは囚人だけでは決して無い。囚人を見守る看守もまた過酷な生活を強いられていたのだ。

この小説の中心となる場所は「月形刑務所」だ。現存している。月形町は私個人としても思いを馳せている街のひとつなので、札幌近郊もしくは国道12号線を頻繁に利用する方は是非読んでいただきたい。当時の地図から、一体どうやってここまで道路を開いたのか、現在の道路を思い浮かべながら土地勘を頼りに追っていくのもこれまたいいんだ。月形には「月形樺戸博物館」なるものがあり、そこで囚人の当時の暮らしなどを見学することも出来るんだけど、いついっても人っ子1人いなくてガラガラなんだよな。網走刑務所程の資料館じゃないからインパクト薄いかねえ。

月形樺戸博物館/月形町

 

ゴールデンカムイのような漫画もいいが、活字によるおどろおどろしいのに実に冷静な文調で史実を読むのもおもしろいよ。

 

また、吉村昭氏の小説といえば、現代の若い人でもなんとなく馴染みがあるのは↓

数年前に、ビートたけし山田孝之主演でドラマやってた。網走刑務所の脱走犯の話。

あと、よくテレビで特集をやる事件を題材にした小説↓

 

苫前村三毛別熊襲撃事件を題材にしたもの。

話は反れるが、数年前、苫前町郷土資料館に行ったことがある。本当は三毛別熊襲撃事件の現場に行くことも出来るのだがどうやらガチで熊が出現する可能性があるとのことで、未就学児を連れていた私は流石にビビってしまい、止めておいた。

おどろおどろしさは郷土資料館でも十分に体感することができた。オロロンラインをドライブするなら絶対に立ち寄っていただきたいところ。

北海道って他県に負けず劣らずの歴史が無いんです。近代歴史しかなくて、だから観光地と行ってもほとんどが明治以降に出来た場所でちょっとコンプレックスがある。他県に行くと城とか神社とかいっぱいでそれだけでウキウキしちゃうもんね。

でも、この史実に残るような歴史が短いからこそ知れることは知っておいたほうがいいと思うのです。開拓されて150年しか無いけれど、その中でも凄い歴史はたくさんあるんだから。肌感覚としてでしかないが、北海道民は歴史そのものに対する好奇心が薄い気がする。しかしそれは北海道民が悪いのではなく、北海道自体の歴史が浅いからだと思っている。ゴールデンカムイが流行った背景には、漫画が面白いのはもちろんであるが、北海道は他県から見てイマイチなんなのか分からない「秘境」的存在であるのかも知れない。謎多き土地、ってやつでしょうか。

ああ、読書感想文ではなくなってしまったが、北海道の入植の歴史の観点から見て、この小説はとても参考になるものなので是非ご一読いただきたい。おもしろいよ!