読書レビュー「野党という病い」
これもいい本!というか笑える本かも。
離党した方は単なるアンチに回りそうなものだが、筆坂さんは冷静。党内の組織そのものを批判しているというよりも、政策の脆弱さを主に批判していて説得力がある。
やはり古くからの共産党員は色々見てきているなあ、という感想。
そして、共産党の主張(特に憲法解釈)の変遷。主張が戦前より変わっていないと思いきや、時代によって風見鶏。そのことを今の共産党員はほとんど分かっていないという何とも…70年代の学生運動に参加していた若者と同じ感覚。未来も過去も顧みることなく、つまり今しか見ていないという非現実路線を走っている感じ。共産党員さん、議員さん、ちゃんと赤旗を隅から隅まで読んであげてよ…。
筆坂さんの語る「保守と共産主義の違い」には大いに納得した。今まで一番腑に落ちたかもしれない。まあ、そういうことだよね、と思わされた。確かにさ、今の各党の主張を見てると、どっちがリベラルでどっちが保守かわけわからん。自民党こそリベラルまっしぐらじゃねーか。
それが更に保守とリベラルの違いを混乱させている。
だんだん読み進めていくと、むしろ共産党のいじらしさに愛着すら湧いてくる。頑張れ共産党(応援はしないが)という気持ちにすらなる不思議。ただ、ガチ党員にこの本を読ませたら怒り狂う…かも。
共産党含め、野党の戦後の歴史も面白かったな。単にくっついたり離れたり忙しい奴らだなとしか思ってなかったけど、その思いが成就された感じ。建設的ではない。
野党は現段階においても、ただのクラッシャーでしかないのに、クラッシュしたらしたで、新しいものを作る能力がない。これは民主党政権において、その現実を存分に披露したのを国民はみんな知っている。筆坂さんはそれを含め、わかりやすく野党のあり方をやんわり説明してくれている。めっちゃわかりやすい。
まだ共産党に愛着があった頃の筆坂秀世さんの本も読んでみようっと。
スカウトした女性
今年一緒に仕事をする予定の女性(私より10歳ほど年下)と二人きりで話す機会が増えた。
4月からは二人で本格稼働。今後、険悪になることもきっとあるだろうし、今後の見通しなんて全く無い。人を雇うときの心構えと言うものを初めて真剣に考える日々で、気がついたら彼女のことを考えていることが多くなった。
私が「この子しかない」と思ってスカウトした人材だ。スカウトした時点では全く迷いがなかった。
にも関わらず時間が経つにつれ、勝手に悪い風に達観している自分がいる。
まあ、駄目なら駄目で仕方ないか・・・もし決別するなら早いうちに・・・
これは、自分が傷つかないようにする勝手な思い込みで、相手に対して全く失礼な考えである。良くないよなと思いつつも、どこかで「やっぱり駄目だったか・・・」とショックを受けたくないのでつい気持ちに保険を掛けてしまう。
彼女に今までの話を、聞ける範囲で聞いている。
彼女は出会ったときから自己肯定感が低い女性だった。それは見ているだけでもわかる。にも関わらず責任感は強い。私からするとまさに探していたタイプそのものだ。自己肯定感が低いにも関わらず責任感が強いというのは矛盾している。そこが大事なのだ。
「多分、もともと自己肯定感が低い子ではなかったんだろうな」
彼女の自信を奪ってきたのは全てここ10年間の仕事だった。私がスカウトした職場でもさらに打ちのめされていたのが現実だった。飲食業しか経験したことがなかったことが全ての原因だと思った。飲食業がダメ、と言っているわけでは無い。その世界しか知らないで、流されてきたことがいけなかった。
飲食業を一生やっていく覚悟がないのに、そこから抜け出す勇気もない。これが全ての元凶だ。
「環境が変わればこの子は絶対好転するぞ」と思うとせめてものチャンスを与えたくなった。
私と一緒にすることで彼女の機運が上昇する保証なんて無い。むしろ悪化するかもしれない。しかし、彼女にとって大事なのは、たとえ今後私と決別したとしても「私は他の業種を選ぶ選択肢がある」ということに気がついてほしい。
彼女に質問しているうちにそれなりの自我はしっかり持っていることに気がついた。
「プライドはあるでしょ?」と聞くと、「けっこうちゃんとあります」と答えてくれた。
だよね、それを聞けて良かった。自分の意志に無駄な謙虚さは要らないと思う。
それと同時に20代の頃、もっと友達を作ったり、趣味に勤しんだり、恋人を作ったりしておけば良かったと話してくれた。本当は読書が好きなのに仕事のための自己啓発本ばかり読んでいて時間の無駄だった、なんて話もしていた。
でも、私はメタクソに心をズタズタにされる20代ってのも悪くないと思う。自己啓発本か。(ちなみに私は絶対に読まないタイプ)いいじゃないか、その本に書いてあったことに感化されて一生懸命仕事に邁進していた時間は無駄じゃないよ。
私は、おこがましくも彼女の人生のほんの数ヶ月でも良いから転機を与えられればそれでいい。その方法が自分と一緒に働く、それしかなかっただけだ。
そして、自分が30歳くらいの頃、同じように考えていた時期もあったと思う。そのことも思い出した。一つの職場にしがみついていると、上司によって自己肯定感はズタボロにされる経験を私だってしたのだ。そこから抜け出すまでに6年掛かった。
自分から抜け出せるか、誰かに引っ張ってもらうか、その差は大きいが、願わくば彼女には自分で抜け出す術を身に着けてほしい。そのための通過点で有りたいとは思う。
彼女との仕事は1年しか考えていないことは彼女にも伝えてる。1年やってみて、それでも私と続けたければ私は血眼になって2人分の仕事を取ってくる。でも、本音はこの業種が面白いと思ったら、それなりの会社に入ってきちんとした上司と出会って真っ当な会社員になって欲しい。私では師匠になれるような技術も器もない。
絶対にいい上司と出会うことは必要なのだ。私はその点は幸せな人生を歩んでいる自負が有る。
さて、1年後どうなっていることやら。怖いやら、楽しみやら。
今は思いの外、自身が責任感で押しつぶされそうになっている。
覚悟が足りないのはどうやら私の方みたい。
読書レビュー「汝、ふたつの故国に殉ず」
これは感化されたなー…目頭が熱くなる本。
門田隆将さん、やはり文章がうまい。引き込まれる。読みやすい。のは、当然として。
かなり胸に響いた作品。作品というより偉人伝ですが、こんな人が実在したのか…という驚きを隠せない。現代において、日本人はおろか世界にもこのような素晴らしい人がどれほどいるだろうか。
第二次世界大戦が終わった後の、日本の有り様や中国の共産化、冷戦など歴史で勉強をした程度なら表面上サラッと理解していましたが、なぜだかあまり知られていない台湾の戦後。
蔣介石が入ってきて、実権を握ったことは知っているが、どれほど台湾人が苦労して今現在の政治を取り戻したのかを知っている人はさほどいないのかもしれない。
強烈な弾圧と、世界最長の「戒厳令」を敷かれていたこの国の歴史は本来日本人なら絶対に避けてはいけないはず。台湾ほど親日な国は存在しないのに、なぜ日本人は台湾をきちんと知ろうとしなかったのか。それは台湾「国民党」による情報統制や言論弾圧が永らく続いていたため、知ることが出来なかった部分もあるかもしれないが。
気がついてみると、台湾が自由な国へと拓かれた時にはすでに日本人にとって台湾は「観光地」という位置づけになっているが、かつて一緒に歩んだ国としてどうして歴史教育として台湾の勉強をさせないのか、不思議でならない。
かくいう私も李登輝先生の本を買ったにも関わらず積読していたことを深く反省。
心を揺さぶる勇ましい「湯(坂井)徳章」の姿に、ただの英雄という言葉では済まない畏敬の念が込み上げてくる。少しでも多くの人に読んでほしい。

