作業ヘルメッターのおんな道

肉体労働系レディ(淑女)の徒然です。フリーランスで造園土木の作業員をしています。お仕事と酒があればどこでも飛んでいきます。酒飲み。日焼け上等!

除雪のお仕事

私は北国在住。

そして造園業をメインとして志すもの。

 

冬の仕事は定番の「除雪業」だ。

とはいえ、今まで書類と向き合うか現場作業を眺める仕事しかしたことがないので「除雪」は未経験。

今年から、個人事業主としてやっていくと決めたからには、冬の食い扶持「除雪」を避けて通ることは出来ないと思っていた。

 

中型免許はもっている。8トンまでのトラックなら乗れる、免許としては。

ただ、私は車の運転が得意ではない。自分の軽自動車ですら冬の運転は神経すり減らして頭がおかしくなりそうになるのに、トラックなんてとんでもない。

 

前職で、意地で取った大型特殊免許がある。

現場代理人で、且つ女の私には必要ないと言われていたので、自腹で取りに行った。

確かに使い所はなかったがいつか絶対この免許を使いこなしてやると思っていた。

 

いまこそその時。

12月から求人で除雪作業員の仕事を探し始めたが、あることあることたくさんある。しかしほぼ全ての条件に「経験者」と記載がある。当然だよな・・・。

 

12月はまだ「失業手当」があった時期なので急ぐことはしなかった。

1月からなんかあればいいや、と思って余裕をぶっこいていたら、1月から軒並み除雪の求人は減っていた。まあ、これも至極当然のことだろう。

 

1月からはいよいよ働かなければ収入がゼロ。

焦る。なんでもいいから仕事をせねば。でもやるからには作業員。

敷居が低そうな「未経験者オッケー」な求人にアタック。「肉体労働したいです」

 

おもいっきり土建屋にアタックをした。うーん、多分無理だろうな。

すると相手から「おや、大型特殊もってるの?除雪の仕事する?」と。

「すごくやりたいんですけど、私、免許だけ持っててペーパー未経験なんですよ」

「実はさ、小さい機械で除雪するところ今年依頼が来てたんだけど、人が足りなくて断った案件があるんだよね。多分素人からでも出来そうな現場だから、一度断ったところにもう一回聞いてみるよ」

 

ほほほんとですかあ!

ありがとうございます!

 

「聞いてみたよ、すぐにでも来てほしいって、やってみるかい?」

 

やってみたいですー!!!

 

ということで私の除雪タイヤショベルデビューが決まった。

商業施設の屋上除雪と駐車場除雪で確かに気楽。しかも深夜帯だから人を巻き込むこともない。

練習し放題。ありがたい本当にありがたい!

 

実際やってみると、小さい規格の機械だから除雪にめちゃくちゃ時間がかかり、8時間はおろかかかるときは10時間オーバーでずっと機械を動かしている。技術が至らないことも大きな要因ではあるかもしれないが、それにしても敷地に対して機械が小さい。

その分作業反復回数が増えるので「作業技術」は格段に上がっている実感はある。

機械をガチャガチャしているだけなのに翌日は筋肉痛が止まらない。

 

「できるようになってきたんじゃない?来年もやるかい?」

雇い主の社長はご機嫌にそう言ってくれているが、「ちょっとシーズンを終えてから考えてみます…」と濁してしまう自分がいた。

 

しかし、深夜に寝静まった街を見ながら通勤していると

除雪の仕事している人たちって尊いって思った。

 

こんなにたくさんの人たちが、道路の、コンビニの、病院の、スーパーの、銀行の除雪を深夜に行い、昼間のインフラに備えてみんな働いている。

朝には何事もなかったかのようにそこをみんなが利用する。

 

除雪の仕事の給料は決して高くない。深夜割増なんてつかない。そして、交代制ではない。降らなかったら休み、降ったら何日でも構わず連勤。降るか降らないかは天のみぞ知る。時間給ではない。完遂して終わりだから、どんなに大量の雪が降っても、終わらなければ帰れない。且つ、朝までには終わっていなくてはいけない。

 

いくら季節性の仕事とはいえ、もう少し待遇よくてもいいよな、と思う。

 

昨年、私の街は稀に見る大雪の年だった。商業施設はおろか、道路の除雪が間に合わず、しばらくの間いつも道は渋滞だらけ、高速道路は閉鎖、市が運営する雪捨て場もあまりの雪の多さに閉鎖。トラックがスタックしている光景は当たり前に。

 

社長に聞くと、昨年は30時間労働するような除雪作業員もザラにいてそれが原因で退職する人が続出したという。今年は雪がさほど多くないが、その人達が戻ってきたとは言えず、相変わらず人手不足は解消できていない。

 

技術がどんなに高くて、仕事を早くこなせる人であっても、雪の量や頻度は調整できないため、技術者こそ「やってられっかよ」になってしまうのも仕方ない。

また、燃料代も上がっているため、そのしわ寄せは作業員の待遇にもかかってくる。

 

我が家の排雪はいつも同じ業者にお願いしているが、昨年は予定通りに排雪に来てくれなくて、正直イライラした。最終的には春に返金があったが、そういう問題じゃないよ・・と思っていた。

にもかかわらず、今年は燃料費の高騰を理由に3割ほどの値上げがあった。おいおい、そりゃないだろと思った。

 

しかし、自分が除雪の仕事をしてみて初めてその大変さがわかった。

返金に踏み切ることは苦渋の決断だったであろう、相当クレームも来たんだろうな。

 

大変だけど、やってみて良かった仕事だなと思ってる。仕事はいつもそう、やってみないと分からない。大人になって、様々な立場で物事が見えるようになったと思いこんでいたがそうではない。年をとる度ハッと我に返るから、いくつになっても様々な仕事がしてみたいと思う。

 

もうあと2ヶ月しないでこの仕事は一旦終わりを迎えるが、最後まで無事故で技術向上を意識しつつ、頑張りたい。

少しでも除雪業の理解者になれたことを幸運と思う。

 

まあ、辛い仕事に変わりはないが。