作業ヘルメッターのおんな道

肉体労働系レディ(淑女)の徒然です。フリーランスで造園土木の作業員をしています。お仕事と酒があればどこでも飛んでいきます。酒飲み。日焼け上等!

読書レビュー「北朝鮮拉致工作員」

これは凄い。

2000年の本なので古いものではあるが、この証言本はすごい。ここまで具体的に証言するとは。証言する者は、しばし韓国側のスパイ(韓国の人間で、北朝鮮サゲ証言をする者)というレッテルが貼られがちだが、この人は本物と思える。

強制収容所から命からがら逃げてきた方々の証言本はいくつかあるが、ガチガチにスパイ教育された人の証言は毛色が全く違う。これが隣国のスパイ教育なのか…

そしてなによりスパイ養成所ではたくさんの拉致日本人を確認しているということが最大のポイントだ。本当にたくさんの日本人に遭遇していて、そのほとんどは拉致被害者に間違いないだろうということ。

そして、分かっているにも関わらず声を上げない日本人に対して明らかにおかしいと指摘している。この本の出版時、拉致被害者の5人が帰還する前だったため、まだ北朝鮮は拉致を認めていなかった。

この著書は拉致被害者帰還に多大な影響力があったはずだ。

金賢姫の逮捕も北朝鮮スパイ教育にものすごく影響力があったことも、皮肉だ。

でも、北朝鮮において日本にスパイを送り込むことは一番簡単なミッションとして与えられているということが何よりも悔しく悲しい。どうしたって、日本には法律の壁が憎いくらい高いのだ。情けなくなる。

ちなみに著者は2016年前後に暗殺されてしまったようだ。それ以前に麻薬取締法で韓国にて逮捕されてから、証言の機会はなくなってしまったようだが。

でもどのような道を辿っても、彼はいずれ必ず暗殺される運命だったのだろう。

脱北後も様々な人間に良くも悪くも巡り合い、穏やかな余生を過ごす日なんて無かっただろうと思うと悲しい気持ちになる。また、彼の証言によって北朝鮮スパイ教育はさらに苛烈になっていっただろうと想像できる。どうにもこうにも前向きな気持ちにならない本でもあった…